Laboratorism - 新井裕己のハードコア人体実験生活
 

ぶっちゃけヤブというか急傾斜ツリーで地形がよくわからないので、滑降ラインは適当です。

青が予定ライン。赤が現実ライン。うーん。

八海山スキー場の駐車場からのライン。ここからだとシュートはいい感じですね。

ちなみに、こういうときに限ってヘルメットカメラの充電忘れてて、見事電池切れしました。
ということで動画はありません。すいませぬ。

 
さてと、今日は使い果たした感もあるので、明日はレストかなあ。
妙高に入院してるYOちゃんのお見舞いかねがね、旦那様の方と計画の打ち合わせでもしに行かねば。

移動ー。

ドロップポイントでここまでの絶望感を味わったのは初めてかもしれない。

第一の核心であるドロップポイントまでのアプローチは、なんとかやり遂げた。
雪の不安定さには、いつも以上に慎重だったが、やむなく風下の雪庇下の面をトラバースするときに、破断面10cmの面発生雪崩をくらった。しかし雪崩れる予測は立っていたので、力でねじ伏せた。

苦労してドロップポイントまでくれば「後は滑るだけ」のお楽しみのはずだろう。

オブザベーションもそれなりにできていたはずだ。
ピークからスキーヤーズレフトの滑り台から狭いシュートを抜けて、ライトに曲がってヤブクリフバンドのある広い雪面を降りるというオブザベーション。
対岸から見た傾斜は、ほとんど錯覚に過ぎないのは経験からわかっていた。
実際は見た目よりも斜度はないものだ。
垂直に見える雪壁も実際には50度くらいのものだ。
大体にして、それ以上の傾斜に雪が付くことなんてないんだから。

 
それがどうだ、眼下に広がる雪面は出だしから60度は確実にある。
45度面ツル滑り台と思ってたら、60度ぽっこりノールでした。
しかもその先がノールになっていて、全く見えない。
ということは70度超。

そんな雪氷の物理法則に反するような地形があるはずが・・・、ある。
現前と目の前に。

そうか!
ここは上越・八海山。
海を挟んだ大陸の東の山。地球上でも希有な地形配置は、世界一の湿雪を60度のヤブにべったりと貼り付ける。
マジカル生コンスノーの魔法は、いまここに結実した。

 
オブザベだと多分45度の小滑り台と思っていたが、60度のノールか。
先が見えないし、横が狭い。ヤブとクリフに挟まれている。
この傾斜だとヤブにぶら下がるのも苦しいだろう。
てか、滑りにきて、いきなりヤブに突っ込むことを考えるバカがいるか!

その先は広い雪面のはずだが、そことて45度はあるはずだ。安易に飛べる斜度ではない。

 
どうする?
あきらめるか?

右の斜面は完全なノーチェックだ。繋がってるかもしれないし、繋がっていないかもしれない。
数少ない対岸から撮った写真では死角になっている。
地図は崖マークばかりで無意味だ。

オブザベーションができていたはずの左ラインは想定外の60度。
右ラインは全く何の情報もない未知の斜面。

全く違う斜面に移動するというのもアリだ。
が、心を占める欲求の大部分は「このノールの先がどうなっているか知りたい」だ。

60度の雪壁に意味があるかわからないが、久々にピットを掘る。
Fistな新雪層だけが落ちるだろう。その下は4Finger→1Fingerと順調に安定している。
スラフマネジメントは慎重に。

 
さあどうする。決断のときだ。

さあ、
さあ、

滑り初めてもまだ決めていない。
雪の感触とフィーリングに任せる。

 
右だ。

とりあえずのセイフティーラインを選んだ。
が50度を超えるパウダー。すばらしい。ターンもスムーズで、スラフよりも先に滑る。
ラインをずらして止まると、かなりの量のスラフが流れていく。

このまま気持ちよく滑ってしまいたいが、欲求は左の未練を引きずってしまう。
いい斜面をわざわざトラバースして、ノール下に出られないか偵察に。

しかし、酷いヤブに阻まれ、近づくどころか、先さえも見えない。
仕方なく戻りながら、途中にあった幅2mの55度ヤブシュートをチョッカって抜ける。
そして、また左に偵察に行き、ヤブに阻まれ戻ると、またも狭いヤブシュートでチョッカる。

これで安全な広めの10m幅のメインシュート上部に出た。

が、ここを下りるのを良しとせず、またも左へトラバース。
今度はヤブは薄くなったが、スラフで新雪が落ちていて硬い。
しかも地形がうねっていて、相当にテクニカル。久々にジャンプターンなどをしてしまった。

下にはオブザベしていた広い雪面が見える。やっと想定ルートに合流できる。
小さいヤブクリフを飛んでそこに着地。

ここまで完全なオンサイト滑降だった。
久々に味わった、命がヒリヒリと焦げ付く感覚。

 
振り返ればオブザベしていたヤブクリフバンドの真下だった。
ここまで来ると下りすぎで、やはりノール下の核心部分は未だベールに包まれたままになってしまった。

しばらく下りると右からメインシュートと合流。
左右が切り立っていて、小蓮華山逆Y字(直登ルンゼ)に似ていなくもない。
ここからは完全なデブリ祭り。ガタガタでまともに滑れないので、側壁に乗り上げて滑る。

下部は沢地形内に小尾根があるので、そこを。
凹凸が激しいが、粗なツリーでまあまあ滑れる。

沢が割れた辺りで休憩し、そこからは薄いスノーブリッジを渡り、なんとかシールなしで階段登行を駆使して進んだら、駐車場の排雪場に出た。

 
八海山西壁の初滑降だろうが、個人的には完全な敗北。
美しさの欠片もない無理矢理ねじり降りただけのスキーになってしまった。
ルート名は「Vice-decision」。
八海山スキー場の駐車場からは結構かっこよく見えるシュートをそう名付けます。
駐車場から見た八海山。一番左のシュートがVice-decision。失敗作だけど結構かっこいい。

スキー場トップからアプローチは2.5時間くらいで、ドロップポイントの1364mピーク。
スキー場からちょっと行った主稜線からの八海山。女人堂の小屋越えて、森林限界づたいにトラバースして、ボウル状のところに滑り降りてから、登り返して1364mピークへ。
コルまで150mほど尾根を降りたら、そこからは500m一直線の40度くらいのシュート。
デブリがなければ楽しいでしょう。

 
ピークからのマジカルなノール。
いつの日か通せるだろうか?