Laboratorism - 新井裕己のハードコア人体実験生活
 

前回、乙妻山北東斜面を滑った後、恥ずかしながら初めて戸隠山を見た。

霊仙寺山から見た戸隠連峰。かっこよすぎです。

ここを滑らずして、何が山岳スキーヤーか。

あわてて戸隠スキー場の駐車場まで上がり、写真を撮り、入念にインスペクション。
狙うラインは決まった。

翌週、霊仙寺山からも改めてチェック。
滑降意欲をそそるシュート群。
すばらしい。

低い標高と南東面という斜面の向きからして、今シーズンのチャンスはほとんどないと思っていたが、少ないながらも降雪と曇りが続いた3月8日、なんとか条件が揃いそうなので、トライすることにした。

6時くらいに戸隠に着いたが、山はガスの中。
仕方なく、戸隠スキー場の第3駐車場でガスが切れるのを待つ。
ここは木に邪魔されずに戸隠連峰を眺めるのに格好のポイント。
トイレも近いし。

7時。
なんとか晴れそうだ。
予報は好転すると告げているので、とりあえず出発。

戸隠キャンプ場の駐車場では降雪は2cmくらいか。
その下は硬いサンクラスト。
まあ、高いところは大丈夫だと信じたい。

7時15分出発。
戸隠キャンプ場を進む。
昨日以前のクロカンのトレースがあるが、ファットスキーとは幅が違い過ぎて全く役に立たない。

平原から大洞沢に入る。
地図からは雪崩の危険があるかと思っていたが、結構広く、周りも樹林で厳冬期でも大丈夫そうだ。

出発から1時間ほどで沢が急になった。
夏は滝にでもなっているのだろうか(不動滝というらしい。夏は鎖場で高巻くようだ)、上部斜面が一旦見えなくなる。

この辺りまでくると新雪は20~30cm。
日射面はその下にサンクラストがあるが、日陰面は底付きしないドライパウダー。
すばらしい。

クライマーズレフトの斜面をトラバースして、急な斜面を登ることにする。

と、小さな尾根から小さな沢に降りようとしたところで、谷足がズボっと落ちた。
新雪に覆われたヒドンクラックに見事に滑落。
山足のスキーのトップが額に直撃し、見事なコブができてしまった上に、ファーストレイヤー1枚だけだった身体は見事雪まみれに。

ちょっと萎えた。

 
狙うラインの雪質を考え、ちょっと南東面を登ってみたが、信じられないほど硬いサンクラストになっている。
氷板ではなく、黄砂が混じって異常なまでに硬い。
急斜面のトラバースで、シールはもちろんスキーアイゼンもほとんど効かず、ストックで滑落する板を食い止め、なんとか脱出した。

これでは狙うラインは到底無理。
とりあえず一不動まで登って、泣く泣く大洞沢を下ろうかと思ったが、ふと見上げた壁のクライマーズレフト側はかなりよさそうな斜面に見える。

慌ててインスペクションで撮影した画像をチェックすると、上もキレイに繋がっているようだ。

作戦変更。
ターゲットは北東面に。

 
一不動へは南東側からトラバース気味にラインを取ったが、途中に1.5mほどの雪庇くずれ雪壁があって、板を投げ上げて、ストックを逆さまに突き刺して突破した。

一不動避難小屋はかなり雪が吹き込んでいた。
ここまで2時間。

一不動避難小屋。入口も雪が吹き溜まっているが、中も結構雪まみれ。

一時期は完全に晴れ渡っていたが、この頃になると調度戸隠連峰の南東面にだけ厚いガスが立ちこめてしまった。

しばらく天気待ち。
ガスは太陽を覆ってはいないので、日向ぼっこ。

幾分回復傾向なので、主稜線を1888mピークへ向けて登る。
ここは雪庇とクラックとアイスバーンとヤブに囲まれた狭い尾根で、シール登行は相当に難しい。
無理矢理シールで登っていたら、見事に雪庇にクラックが走った。

ピシッと雪庇にクラックが。危機一髪。

早々にあきらめてアイゼンに履き替えるが、スキーを担ぐとヤブがいやらしい。
かといって左は雪庇。
足元はヒドンクラック。
なかなかシビアな稜線。

しばらく登るとほぼ水平になる。
またも稜線の東側は厚いガスに覆われたので、天気待ち。
どこを滑るのかも見えないのは精神衛生上よろしくない。

とりあえずデジカメの画像からドロップの目印になる大木3本をチェック。
イメージを反転させて、場所を理解した。

しばらくすると、完全にガスが晴れた。

五地蔵山南東面。いい斜面だけど、やっぱり方向が悪いよねえ。

高妻山南東面。こっち面はピラミダルでかっこいい。クリフもあってナイス。けど向きがねえ。

準備を済ませ、いざドロップ。

またもドロップの直前まで尾根の右に降りるか、左に降りるか悩んだ。
結論は右。
こちらのほうがシュートっぽくて手応えがありそうだ。

が、3ターン目で失敗に気付いた。
こちらはかなり日射の影響を受けて、忌々しい黄砂サンクラストが底付きする。

一度停止して、やはり尾根を乗り越えて左側にトラバースすることにする。
が、ここのトラバース、スラフが下で収束し、かなり大きくなっていくのが見える。
黄砂サンクラストは相当に硬く、斜度も45度を超えている。
足元からはスラフが落ち続ける。

標高を落とさないようにイソイソと尾根を超え、なんとか左の斜面へ。
こちらは雪がいい。

初めからこちらにすればよかったが、これもオンサイト滑降らしいところだろう。

いざリスタート。
ウネのある壁部分を抜けてしまうと、すばらしい広い斜面が待っている。
雪もよく快調に飛ばす。

その先は浅い沢地形で、適度に当て込みながら、一気に大洞沢に合流した。

後は登りトレース通りに牧場に出たが、あまりに雪が腐っているので、途中でフッ素ワックスを塗り足す始末。

この時期のパウダーは本当に儚いものよの。

1888mピーク北東面。今回滑ったのは左のヤブに隠れて見えない辺りw。

今回の滑降ライン。狙ってたラインは内緒w。
 
狙っていたラインには行けなかったが、南東面主体の戸隠でもパウダーを滑れるいいラインが見いだせたと思う。
3時間弱で登れて、車まで滑れる標高差700m。
まともに滑れば大洞沢まで標高差450m、最大傾斜45度、平均30度の北東面のパウダー斜面。

ガリガリシュートのエスケープルートにしては贅沢過ぎるくらいの出来と思う。